【トップインタビュー】3つの未開拓に挑み新たなビジネスをドライブするDXソリューションセンター
【トップインタビュー】3つの未開拓に挑み新たなビジネスをドライブするDXソリューションセンター

テクノロジーとクリエイティビティを武器に、クライアント企業のビジネスの成長と進化をサポートするDXソリューションセンター。今回は石川 信行執行役員兼センター長に、DXソリューションセンターのミッションと、先端技術を活用したソリューション事例、そして今後の展望について話を伺いました。

テクノロジーの力で新しいビジネスや価値を生み出すDXソリューションセンター

はじめに、DXソリューションセンターの役割を教えてください。

博報堂DYグループは、TVCMをはじめとする広告の制作と、それを流す広告枠の仲介を事業の中心として成長してきましたが、時代が変化する中で広告以外の領域でのビジネス創出も求められるようになってきました。

そしてそのための手段の一つとしてテクノロジーの活用が有効なのではないかという仮説のもと、マーケティング×テクノロジーで世の中に新たな価値を提供するために、2023年8月に立ち上げられたのがDXソリューションセンターです。

そのため、第一に広告以外の領域でビジネスの可能性を模索すること。そして第二に、日本で未開拓の技術をいち早く取り入れてビジネスにつなげること。第三に、テクノロジーが活用しきれていない分野や生活者の身近なところに先端技術を浸透させていくこと。これら3つの未開拓領域での挑戦をセンターのミッションにしています。

石川さんはどのような経緯でDXソリューションセンターの立ち上げに参画されたのですか?

私は大学院卒業後に複数の媒体を扱うIT企業に入社し、情報システム部門に配属されたのですが、そこで担当したプロジェクトがAI/機械学習領域に携わるきっかけになりました。

2010年ごろ、世の中的にデータを統合して何かやっていこうという機運が高まってきて、私のいた会社でもとりあえず全社のデータを一箇所に集めてみようということになり、そのプロジェクトにアサインされました。プロジェクトを推進するうちに、当然ながら集めたデータの活用が課題となりました。データを効果的に活用するために、データを処理する機構、機械学習アルゴリズムを学ぶ必要性に駆られ、AI/機械学習領域に足を踏み入れました。

データを集めて活用する目的は、それをビジネスにつなげることです。とりあえず集めるというところから、ビジネスで成果を出すというところまで徐々にミッションが積み重なり、最終的にはグループ内で技術提供だけでなくコンサルティングのようなこともやるようになりました。

その後、自分の持つスキルや知見を別の分野でも活かしたいと考え、小売業界を経て、縁あって博報堂テクノジーズに入社しました。博報堂テクノロジーズがDXソリューションセンターという組織を立ち上げ、テクノロジーを使って新しいビジネスや付加価値を生んでいこうとしているという話を聞き、その中心的な役割を担うことは自分が今までやってきたことの延長線上でもあるし、飽き性な自分でも飽きなそうだと感じて入社を決めました。

各案件におけるDXソリューションセンターの対応範囲を教えてください。

世界で発表されるアルゴリズム関連の論文などから新しい技術の情報を収集し、試作をして活用方法を議論するところから、クライアントのニーズに沿ったMVP(Minimum Viable Product)の開発、本番導入に至るまで、一連のプロセスをカバーしています。

現在は約10名の初期メンバーで構成されており、開発エンジニアのほかに、クライアントと向き合うコンサルタント、インフラ担当、契約書やコスト管理を行うビジネスサイドのメンバーなど、それぞれの専門領域で活躍しています。博報堂の営業やクライアントからDX案件の依頼を受けてプロジェクトがスタートすることもありますが、それだけでなく、テクノロジーを起点にセンター独自で仮説立てをし、ビジネス開発をしているケースも出てきています。

先端技術で商品開発の課題を解決するマルチエージェント

開発を進めているサービスについて教えてください。

DXソリューションセンターでは、生成AIやIoT開発、画像・テキスト解析など多様な技術と企業の課題をかけ合わせてサービス開発をしていますが、そのうちのひとつが、複数の専門家AIによってアイデア創出をサポートするマルチエージェント「Nomatica(ノーマティカ)」です。

■関連リンク
Nomatica(ノーマティカ)-マルチエージェント-製品紹介サイト

生成AIが大きなムーブメントとなる中で、人格を与えた生成AI(エージェント)に会話をさせるという論文が海外でちらほら発表され始め、AI英会話アプリのように会話をサポートしたり、人間の代わりに発言をしたりするようなサービスもいくつか出てきました。

こういった、機械を相手に議論をする、もしくはさらに進んで機械同士(マルチエージェント)に議論をさせるというサービスは今後の需要が見込めるだろうと考えて、われわれの組織でも2023年12月ごろからビジネスの機会を模索し始めました

そんな中で、あるクライアント企業が新商品の開発に課題を抱えているという話を聞きました。具体的には、長年愛されている企業だからこそ新しいアイデアが欠如し商品がマンネリ化してしまっているという課題と、アイデアを出して企画を練ってからも、実際に市場に投入するまでに製造・物流・リテール営業などの各フェーズで検討、調整、差し戻しが発生し、リードタイムが長期化することで、市場投入に至るまでにニーズが変化してしまうという大きく2つの課題があるようでした。

これらの課題に対し、われわれが持っているマルチエージェントの技術を用いたアプローチが有効なのではないかと考えました。生成AIが持つ膨大な知識をもとにアイデアを出すことができますし、各種プロフェッショナルの人格を持つエージェントを最初から議論に参加させることで、差し戻しの回数を削減し、市場投入のリードタイムを短縮することも可能になるだろうという仮説を立て、サービス提案をさせていただきました。

具体的には、エンジニアやマーケター、コンサルタント、研究者など多様な専門家AIの中から必要なペルソナを選択し、アイデアの軸や評価軸、会議のゴールを設定した上でディスカッション開始のボタンを押すと、専門家AI同士が即座に議論を開始し、アイデアを取りまとめてくれるというものです。

複数のアイデアを評価軸に沿って評価し、優先順位付けも行います。もちろん、アイデア創出の土台となる企業独自のデータのインプットや企画に関する最終の判断と責任は引き続き人間が担う部分ですが、マルチエージェントを活用することで、想定されるリスクや優位点をある程度洗い出した上で、社内での議論を始めることが可能になります。

このマルチエージェントの開発についてプレスリリースを出したところ、複数の企業からお問い合わせをいただいたため、現在(※1)はSaaSとして展開すべく、いくつかのクライアントと共にPoCを進めています。広告以外の領域でのビジネス開発という観点と、先端技術のビジネス活用という2つの側面で、DXソリューションセンターの先進事例になっていくと考えています。

※1:2024年9月27日時点

先端技術を広く深く社会に浸透させる挑戦

DXソリューションセンターとして今後取り組んでいきたいことは何ですか?

未開拓の技術を取り入れていくという観点では、生成AIに留まらず、機械学習やAIというアルゴリズム全般について幅広く扱っていきたいと考えています。ハードも踏まえたIoT開発についても取り組んでいきたいです。

アメリカや中国、イスラエルなどのスタートアップが開発している先端技術は常に注視していますし、それをどう日本でのビジネス展開に応用するかを考えていきたいですね。

ただ、そのためにはまだまだメンバーが少ないので、今後幅広く価値提供をしていくために、ハイスキルなテクノロジー人材に加わっていただきたいと思っています。

また先ほどもお話ししたように、AIや機械学習という分野は、まだ限られた領域でしか価値提供ができていません。一方で、製造業やサービス業など、AIがもっともっと活躍できるポテンシャルを持った領域が社会にはたくさんあると思っています。人の力で長く事業を続けられてきて、今はまだITとは少し距離がある企業に対しても、AIや機械学習の技術で価値提供をしていきたいと考えています。

それぞれが個の力を存分に発揮するギルド型組織

現在のDXソリューションセンターにはどのようなメンバーが集まっていますか?

われわれの組織は全員が博報堂DYグループ外からの中途入社で、小売や金融、人材、通信などさまざまな業界のシステム開発・分析・AI/機械学習等のプロジェクトで活躍したメンバーが集まっています。

たとえば、確動性が高く、新しい技術を積極的に収集して提案をし、メンバーからの同意が得られればすぐにデモを作ってプロジェクトを推し進めていくタイプのフルスタックエンジニアや、コスト管理や組織運営のオペレーションに長けたメンバー、エンジニアリングの知識もあるデータサイエンティストなど、それぞれに得意領域を持ちながら、横との接続ができる糊代を持った方が多いですね。それ故に、個の裁量に任せていても組織としてうまく回っていると感じています。

また、みなさん技術を社会に還元していくことにリアリティを持って取り組んでいるので、チームの中でおのおのがきちんとバリューを出していくぞ、という気持ちが共有できており、意見を活発に出し合う文化が醸成されている気がします。飲み会でも合宿でもとにかくみんなおしゃべりですね(笑)。

一人ひとりの個性が強くて個別行動もするけれど、チームワークが必要なときには一丸となって目標を達成する。そんなチームが私自身は理想だと思っています。

働く環境の面で特長があれば教えてください。

第一に、リモートワークを基本としていて出社の決まりがないことです。また、ミッショングレード制を採用しており、ミッションを達成するための道筋は個々の裁量に任されているというのも特長だと思います。

私自身が自分で考えて行動し、失敗も成功も経験して結果を出していくタイプなので、マネジメントスタイルとしても基本的には各々の判断に任せています。あとは、とりあえずやってみよう、と言っています。

福利厚生が充実しているので、日頃はリモートワークをしていても、歓迎会や合宿などチームみんなが集まる機会を作りやすいのも良いところです。

石川さんご自身も中途入社されて、博報堂DYグループならではだと感じられることはありますか?

新しいことをやっていく上で、未知の領域にも拒否反応を示さずに、むしろ興味を持ってくれる方が多いと感じています。これまでの業界の慣習にとらわれずに話を聞いてくれるので、ポジティブな気持ちで一緒に新しい取り組みができています。

また、クライアントの業界の幅も広いので、いろいろな業界との接点が持ちやすいことも博報堂DYグループならではだと思います。

最後に、どんな方にチームに加わっていただきたいですか?

自ら考え行動してきた経験を経て自信を持って語れる領域があり、その経験を次に活かすことができる方に加わっていただきたいです。分野を問わず、生きた経験がある方を歓迎しています。

※ 記載内容は2024年10月時点のものです

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