マネジメントセンターは、博報堂テクノロジーズの各センターの業務を横断で支える機能を担っています。今回は、クラウドインフラの構築と運用を行うインフラ開発一部の上西部長と、インフラ開発二部の麻生部長に、それぞれのチームの役割や特長を伺いました。
博報堂DYグループを、クラウドが高度に活用される企業へと導く
まずはおふたりの部署の役割を簡単にご説明いただけますか?
上西:インフラ開発一部は、博報堂DYグループでクラウドを高度に活用し、安定的に運営することを使命として、2022年の12月に発足した組織です。博報堂テクノロジーズの各センターや、博報堂、博報堂DYメディアパートナーズ、博報堂DYホールディングスのインフラ支援もしています。
麻生:インフラ開発二部は、博報堂DYグループのデジタルマーケティングの核となる新会社として設立された、Hakuhodo DY ONEのプロダクトおよび、博報堂テクノロジーズの一部プロダクトのインフラを管理・運用しています。
それに加えて、開発者が使用するツール群の管理や選定、運用も担っています。どちらの部も基本的な役割は共通していますが、守備範囲が少し違うというイメージです。
上西:インフラ開発一部と二部で連携してCCoE(Cloud Center of Excellence)を運営し、パブリッククラウドに関する課題解決や能力向上が自律的に行えるような環境の整備も進めています。
パブリッククラウドに関するコラボレーションHUBをめざすCCoE
CCoEについて、立ち上げの経緯と現在地を教えてください。
上西:先ほどお話ししたインフラ開発一部が担うミッションを遂行する組織を、一般的にCCoEと呼ぶと考えています。あえてその看板を掲げることで、チーム内外に対して自分たちの役割を明確化しようとしています。
最初は一部プロダクト向けのガイドライン作りを行っていました。その後中途採用メンバーが増え、CCoEの経験者も入社したことを受けて2023年10月ごろからリブートし、クラウドを活用する人たちのコラボレーションHUBとなることをめざして活動を始めました。
最初に行ったのが、博報堂DYグループ内のコミュニティ作りです。Google CloudとAWSのそれぞれのコミュニティを作り、イベントも開催しています。
麻生:少ししてわれわれの方でも、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(以下DAC※)でCCoEを立ち上げるという話が出てきたため、センター一丸となってやりましょうということで、現在は両部が連携して運営をしています。
※ 現Hakuhodo DY ONE
コミュニティではこれまでにどのような活動をされていますか?
上西:まずはSlackにGoogle CloudとAWSのコミュニティチャンネルを作成しました。最初は博報堂テクノロジーズの中でクラウドに興味がある人だけが参加していたのですが、現在は博報堂DYグループ全体に裾野を広げており、クラウドを高度に活用したいと考える人がどんどんチャンネルに入ってきていて、それぞれ100名前後の規模にまで拡大しています。
ちょっとした疑問などはそれぞれのコミュニティチャンネルに投稿すれば、有識者から回答が得られる場合があります。みんなで事例を紹介し合ったりもしていますね。
麻生:インフラのことを知りたいというプロダクトの開発者も少なくありません。インフラ開発二部では、CCoEとして活動を開始する前から、定期的に開発部向けの勉強会や相談会を実施していたのですが、そこに参加してくださっていた方々も、現在はこのコミュニティに入っています。
上西:そのほかには、Google CloudとAWSの情報を掲載したCCoEポータルの整備も行っており、今後もクラウド、インフラ系の技術を集約していきたいと考えています。
▲CCoEポータルのキャプチャ
Win-Winな関係の構築で案件数を拡大し、加速度的に成長するインフラ開発一部
インフラ開発一部で行っている個別のインフラ支援についても教えてください。
上西:インフラ開発一部には6つのチームがあり、メディアDXセンターのAaaS(Advertising as a Service)を中心に、DXソリューションセンター、マーケティングDXセンター、さらに博報堂の一部の事業部へとインフラ支援を拡大中です。2024年7月現在は、合わせて22の案件が動いています。
個別のプロダクトのインフラを支えているものもあれば、セキュリティ対応やテスト・リリースプロセス検討などの施策もあります。まだ設立して2年弱で、ルールやカルチャーができあがっていないので、そういった部分を整備しながら、組織を育てているところです。
インフラ支援についてはやみくもに案件をこなしていくだけでは意味がないので、開発生産性向上、システムの安定性向上、コスト削減という3つの点でKPIを立て、可視化、分析、改善、横展開のサイクルを回しながら案件を拡大しています。
われわれが連携している組織は、新たなビジネスやアプリケーションを作ることを専門にしています。インフラ部分についてはインフラの専門家集団であるわれわれにまるっとお任せいただくことで、連携先の方々は主要業務に注力することができますし、われわれはより多くの案件に向き合うことで加速度的に成長できるという、Win-Winの関係を築いています。
多様なプロダクトに合わせて最適なインフラ環境・ツール群を提供するインフラ開発二部
インフラ開発二部の業務領域についてご説明いただけますか?
麻生:インフラ開発二部では、2023年時点でAWSでは60弱のアカウント、Google Cloudでは約170という数のプロジェクトを管理しています。管理対象リソースの可視化、手動オペレーションによる障害抑止を目的としてIaC化を進めてきており、すでにほぼ完了している状況です。現在は、誰でもIaCでの対応ができるようなルール作りを進めています。
ちなみに、インフラ開発一部がGoogle Cloudをメインにしているのに対して、二部では多様なプロダクトの特性に合わせてAWSとGoogle Cloudから最適なサービスを選択してクラウド環境を構築しているので、両方の知識が求められることがひとつの特徴です。
また、先ほどお話ししたように、開発者がより良い環境で開発できるようにするためのツールの管理や運用、利用ルールの策定も行っています。現在導入している主なツールは、GitHub、CI/CDプラットフォームのCircleCI、チケット管理やWiki機能ではBacklogやConfluence、Jiraなどが挙げられます。
裁量を求めて集まるメンバー
おふたりの部署はどのようなメンバーが集まっていますか。
上西:私自身は新卒で大手SIerに入り、そこでインフラエンジニアやソリューションアーキテクト、プロジェクトマネージャーなどを経験しながら、15年ほど勤めました。その後IT系のメガベンチャーに転職したのですが、よりスピード感と裁量のある環境を求めて博報堂テクノロジーズに入社しました。カジュアル面談の際にセンター長の阿比留から「自由に裁量を持って進めてほしい」と言われたことが記憶に残っています。
インフラ開発一部の社員は私を含めて10名います。うち2名は元々麻生さんの部署にいた方で、それ以外の方はSIer出身者が多く、事業会社から来た方もいます。年代は、20代から40代までバランスよくいますね。
麻生:私もSIerからキャリアをスタートしました。SIerとしてハードを扱っていたこともあってVMwareに興味があり、VMwareのディストリビューターに転職して、そこでプリセールスや教育を経験しました。その後ゲーム会社を経て、最先端のクラウド環境に触れられるDACに入社しました。博報堂テクノロジーズ設立後、DACから博報堂テクノロジーズに転籍しています。
インフラ開発二部の社員は、DAC入社の新卒メンバーが1名と、SIer出身者、事業会社出身者がそれぞれ数名です。そのほかに業務委託の方も6名いらっしゃいます。
上西:技術選定の自由度やラーニングの機会を求めて集まっているメンバーが多いので、みなさん自発的にセミナーに参加したり、書籍を購入したりして勉強しています。
組織づくりにも取り組める発展途上の環境
チームビルディングのために取り組んでいることはありますか?
麻生:在宅勤務で実際に顔を合わせる機会が少ないこともあり、週4日は1時間のチームミーティングを実施しています。レビュー会や相談会など、テーマはその時々で変わるのですが、カメラオン・マイクオンの日を設けて発言しやすくしています。チームでの食事会も定期的に実施していますね。そのほかには毎週1on1を実施しています。
上西:インフラ開発一部は中途採用社員が多い新しいチームということもあり、全員敬語で話しています(笑)。新しい方が入社されるタイミングで歓迎会を実施したり、インフラ開発二部と合同でゲーム形式のチームビルディング活動を実施したりしながら、チームづくりを進めている段階です。CCoEで開催しているイベントも、チームでコミュニケーションを取る良い機会になっています。
また、Slackの使い方は意識しています。最低限のルールは定めつつ、基本的にはみなさんお互いに配慮し合いながらテキストコミュニケーションをしています。空中戦になりそうな場合はオンラインミーティングに切り替えて議論していますね。
麻生:われわれのチームは、私が入る前からSlackを活用しているので、みなさんそのあたりのバランス感覚があって、気持ちよく業務ができていると思います。
上西:会社としてもまだ設立して数年ですし、中途採用社員も多いので、仕事のスタイルや進め方などの共通認識となるルールやカルチャーは、これからご入社される方も含めてみんなで作っていきたいと考えています。
自由度の高さとそれに見合う学習意欲の高さが特長
おふたりが感じる、前職と博報堂テクノロジーズの違いを教えてください。
上西:先ほども少し触れたように、技術選定の自由度がとても高いです。新たに大規模な予算の承認が必要なものは別ですが、日々設計をしたりプロダクトのエンハンスをしたりしていく中で必要なものについては自分たちで決めて導入することが可能です。
たとえば、もともとはあるPaaSサービスを使っていたのですが、それをクラウドコンテナに移行したことがありました。このときも現場の発案で、アプリケーションの開発エンジニアとわれわれのチームのエンジニアでディスカッションを重ねて進めていきました。なかなか大変な案件ではありましたが、そういったことが自由に決められる環境は魅力的だと感じています。
博報堂DYグループという企業の規模からすると、ここまで自由にできるというのは入社してから良い意味でギャップを感じた部分でしたが、そもそも博報堂DYグループ全体として、クライアントに向き合っている現場が強いというカルチャーがあるのだと思います。
麻生:上西さんの話に近いですが、使いたいツールを自分たちで選定することができるというのは大きく変わった点です。現在Hakuhodo DY ONEで使用しているJiraとConfluenceは、開発の現場から要望をいただき、われわれのチームで検討して実際に導入しました。
ラーニングの機会が増えたことも実感しています。当社には「博報堂テクノロジーズアカデミー」という研修制度があり、各部に研修費用が割り当てられているため、さまざまなラーニングの場に参加できます。われわれのチームでは開発合宿を実施したこともあります。
▲チームの開発合宿の様子
上西:みんな事あるごとにセミナーや勉強会、イベントに参加していますよね。最新の情報にキャッチアップしていないと、自ら技術やツールを選定して提案することができないので、月に数回イベントに参加している方もいます。
たとえばGoogleのイベントに参加した後に、CCoEで運営しているSlackのコミュニティチャンネルに「イベントで発表があったこの部分についてもう少し教えてほしい」と投稿して回答をもらうことで理解を深め、新たな提案をしてくれるメンバーなどもいて、良い循環ができています。
麻生:イベントに参加するだけでなく、きちんと会社に対してフィードバックしてくれたり、業務に活かしてくれたりするので、その機会がみんなの血となり肉となっていると感じます。
最後に、博報堂テクノロジーズ(インフラ開発部門)への入社を考えている方へメッセージをお願いします。
麻生:クラウドを使っているけれど、サービスが決まってしまっていてもどかしさを感じているという方にとってはとても魅力的な環境だと思います。裁量を持って技術力に磨きをかけていくモチベーションのある方にはぜひ仲間に加わっていただきたいです。
私は人と人をつなぐということと、人と技術をつなぐということを常に意識しています。それぞれのメンバーが持っている技術や伸ばしたい部分を見て各プロダクトにアサインしたり、開発部の方とつないだりしているので、チャレンジしたいことにはどんどん手を上げてもらいたいと思っています。
上西:博報堂DYグループという安定した基盤がありつつ、博報堂テクノロジーズ自体はスタートアップ的な部分もあるので、ある程度安心して自由にいろいろと挑戦したいという方には向いていると思います。その中でもインフラ開発一部はできて間もないチームでカルチャーも未成熟なので、自分たちで部署を立ち上げて成長させていく意欲のある方を求めています。
私自身もインフラエンジニアからキャリアをスタートしているので、エンジニアファーストの組織を作っていきたいと思っていますし、メンバーそれぞれが裁量と責任を持って一緒に良いチームを作っていけると嬉しいです。