博報堂テクノロジーズでは、2022年より基幹システムの刷新を進めています。それまでは、さまざまな業務のリクエストに応じて古いシステムへの増築・改修が繰り返されおり、取引システムと会計システムが密接かつ複雑に絡み合った、機動力に欠けるシステムができあがっていました。
社会の変化や博報堂DYグループの経営状況の変化に柔軟に対応することが求められる中で、システムの刷新が企図され、インフラとグループ共通基盤、そして業務アプリケーションの3階層に分けられた、疎結合なアーキテクチャによるシステム構築が行われています。
▲共通基盤の位置づけ
今回は、3つの階層のうちグループ共通基盤に関わるプロジェクトに携わってきた、グループ情報システムセンター システム1部の小林さんと開発1部の石倉さんに話を伺いました。
ユーザーの声が聞ける環境を求めて、グループ情報システムセンターへ
まずはおふたりのご経歴を教えてください。
石倉:私はITコンサルタントとしてキャリアをスタートしました。そこではIT中期計画の策定など、最上流の部分をスポット的に支援しており、数カ月ごとに担当するクライアントが変わっていきました。そのため自分が携わったことがその後どうなったのかが見えず、手触り感が得られないことにもどかしさを感じて転職を考えました。
転職にあたっては、自分で考えたことを実際にシステムに落とし込み、その先の運用までできる情シスの仕事に就きたいと思っていました。転職活動を進めている中で博報堂DYグループの中期経営計画を目にし、博報堂テクノロジーズが設立されて、テクノロジー関連の領域に力を入れていくということを知りました。
情シスというと一般的には堅実で保守的なイメージですが、マーケティング×テクノロジーと謳ってテクノロジーに力を入れていくことを明言している会社であれば、情シスも新しいことにどんどんチャレンジしていけるのではないかと考えて、博報堂テクノロジーズへの入社を決めました。
小林:私は新卒でグローバルIT企業に入社し、基幹系システムの導入プロジェクトに参画していました。アプリケーション領域で要件定義から一部保守に関わる部分までを担当していたのですが、1つのシステムに長期的に関わることはなく、導入が完了すればまた次のシステム導入プロジェクトに参加するという仕事でした。
パートナーとしてシステム導入に関わっている限り、導入後の効果や活用のされ方について直接利用者の方からフィードバックをいただいて改善していくというアプローチを取ることがなかなかできません。
私は仕事をする中で、1つのシステム長期的に関わりながら利用者の声を反映したサービス提供をしていきたいという気持ちが大きくなっていたため、事業会社の情シスとして参画する方が良いのではないかと考えて、転職を決めました。
ちょうど次世代グループ共通基盤の構築という案件が始まるタイミングで、大規模なプロジェクトに関わることができるという期待感があったことと、会社の雰囲気が自分に合っていると感じたことが主な理由で、博報堂テクノロジーズへ入社しました。
面接を通じて多くの方とお話をさせていただいたのですが、みなさんそれぞれまったく違うカラーで、会社としてもさまざまな色を持った方が集まっているんだろうなと想像できましたし、そういった方々とコミュニケーションを取りながら良いものを作っていくのは楽しそうだなと面接時に感じていました。
課題解決のための最適なチーム編成で、One Teamとなりプロジェクトを進める
おふたりはそれぞれどのような役割でグループ共通基盤プロジェクトにアサインされましたか?
石倉:グループ共通基盤の中にはいくつかの機能があるのですが、私はその中のデータクロス分析基盤を担当しています。これは、基幹データやマーケティングデータなど、博報堂DYグループ内の多様なデータを蓄積し、基盤上で分析ができるようにするデータウェアハウスのようなものです。
私のメインの業務は利用者がシステムを使用する中で発生するさまざまなリクエストや質問に対応することです。具体的には、既存のデータに関する問い合わせや、新しいデータの追加依頼、SQLを叩いてみたけれど正しい結果が返ってこないといった困りごと、既存のデータを使ったシステム構築のサポートなど、システム利用全般について利用者の補助を行っています。
小林:私は社員や組織に関するデータを提供する仕組みを実装する、グループユーザーIDマスタ基盤の担当です。博報堂DYグループ各社の社員情報は、それぞれの会社の人事システムで管理されており、それらを統合してデータ提供できるようにすることをミッションとしています。
今回は、新たな単一のシステムを構築するのではなく、複数の既存システムを改修することでデータ統合を実現しているのですが、私はそのうちの1つのシステムを担当するチームのリーダーを務めています。また、それまでは個々で運用・管理していたものを、システム間で連携する必要があったので、全体の仕様を決めていく横断的な部分にも携わってきました。
▲グループユーザーIDマスタの構成
石倉:小林さんたちが提供する社員や組織のデータを実際に利用者が活用する際には、われわれの構築したデータクロス分析基盤を経由するので、小林さんとはそこで連携しています。
プロジェクトの体制についても教えてください。
小林:全体を統括するプロジェクトマネージャーが1名おり、その下に基盤やアプリケーションごとのチームが組成されました。データクロス分析基盤の担当は博報堂テクノロジーズの社員が3部署8名、パートナー企業から最大5名の方に参画いただき、グループユーザーIDマスタ基盤は社員が最大9名、パートナー企業の方も含めると20名を超えるようなプロジェクトでした。
マルチベンダーで実施する中でも、みんなで1つのものを作り上げていくという意識が共有できており、グループ情報システムセンターのメンバーとパートナー企業の方々、また異なるパートナー企業の方同士でも上手にコミュニケーションを取り合いながら、One Teamとしてプロジェクトを進められたことはとても良かったと思っています。
石倉:そもそもプロジェクトの体制図に所属企業名が書かれていなかったですよね。私と小林さんは所属している部署が違うのですが、部署ごとに役割をきっちり分けるというよりは、それぞれの持つスキルをベースに横断的なアサインがされたことも特徴的だったと思います。
小林:そうですね。私の所属するシステム1部は基盤を扱う部署ですが、今回は前職の知見を活かしてアプリケーション領域も担当しました。
今後のミッションはデータ活用の先進事例の創出と、グループ内プロモーション
今回のプロジェクトでこれまで達成したことと、現在の取り組んでいることをお聞かせください。
石倉:データクロス分析基盤はすでにリリースを完了して運用フェーズに入っており、直近1年ほどはユーザー体験の質向上に取り組んでいます。データを集めて、どうぞみなさん見てくださいという状態にはなっているのですが、実際にどういったデータがあるのか具体的にわかるようなメタデータを集約しきれていないのが現状です。
現在はそこを整理して、利用者のみなさんに見ていただける状態をめざすとともに、これまでいただいた問い合わせをもとにQ&A集も用意することで、利用者の疑問に先回りし、問い合わせを減らす取り組みをしています。 とはいえ問い合わせはゼロにはならないので、問い合わせ対応の運用フローも整えて対応スピードの改善も同時に進めています。
また、データ活用の先進事例を作っていこうというチャレンジもしています。たとえば、博報堂DYグループが開催する外部向けのウェビナーを管理しているSaaSとデータクロス分析基盤を連携して、クライアントがウェビナーに申し込んでくださった際に自動で担当部署の営業部長にメールが送られるような仕組みづくりを行いました。それまでは、手作業でメールを作って送っており、その作業に丸2日ほどかかっていたので、それが自動化されたことでとても楽になったと担当者からは好評です。
小林:グループユーザーIDマスタ基盤は2023年の7月ごろから要件定義を始めて2024年6月にサービスインし、現在はこちらも運用フェーズです。グループユーザーIDマスタ基盤では、社員情報と組織情報、そしてそれらをベースにしたユーザー情報を提供しています。ユーザー情報は、統合認証基盤というサービスのもととなる情報で、社員情報とは別の概念です。
先ほどもお話ししたように、社員情報はグループ各社が持っている人事システムで管理されています。それらのシステムからデータを集めて管理するための利用者情報管理システムがあり、さらにそこからユーザー情報を生成するのはまた別のシステムです。データを公開するのは石倉さんが担当するデータクロス分析基盤ということで、統合認証基盤も加えると概念的には5つのシステムが関連しています。
複数のシステムを組み合わせてデータ提供することを実現しようとしていたわけですが、それぞれのシステムに既存の利用者がおり、グループ情報システムセンター以外の部署やパートナー企業がメンテナンスを担っていることも少なくなかったので、影響範囲が広い案件でした。
そのため、各ステークホルダーに実現したいことを丁寧に説明しながら改修要件をお伝えし、運用面も適宜改善しながらプロジェクトを推進しました。各システムの担当者が集まる横断型の検討会や説明会も実施していましたね。今後は他のセンターやグループ各社にも活用していただけるよう、活用事例を展開しながらプロモーションをしていきたいと思っています。
好奇心と想像力を持ってプロジェクトを推進する仲間
プロジェクトメンバーにはどのような方がいますか?
石倉:キャリアの観点で言うと、たとえば、データクロス分析基盤で導入しているパッケージを販売している会社からジョインしてくださった方がいます。入社された時点でプロジェクトの誰よりも詳しくて、頼もしく思っていました。それ以外には私のようなコンサルティングファーム出身者もいますし、ITソリューション企業から来た方もいます。バックグラウンドはさまざまですね。
データクロス分析基盤は一般的な基幹システムと違って使い方の自由度が高いため、どんなユーザーがどういったシステムのつなぎ方をして、どうデータを使うのか、どんなデータを求めているのかという部分の想像力が求められます。今回のプロジェクトでは実際にそういった想像力のある方が集まっていた印象です。
小林:テクニカルスキルだけでなく、関係者を巻き込んでプロジェクトを推進していく力や調整力がある方が多いと思います。
とくに今回は、決められた役割を全うするだけでなく、目の前の課題を解決するためにできることをみんなで考えて実行していこうという意識が強かったので、コミュニケーションも活発でした。他のセンターの方も含めて、みんなが手を差し伸べてくれるような安心感が常にありました。
おふたりが感じる業務のやりがいを教えてください。
石倉:私はデータクロス分析基盤の構築自体には携わっていないのですが、その先の先進事例の創出などに取り組む中で、実際に使ってくださる方との接点を持つことができて、直接声が聞けることにやりがいを感じています。
こんなシステムと連携したいといった問い合わせをいただいてやりとりをしながら一緒に構築をした後に、次はこんなことをしたいと追加の連絡をいただけたときは、最初の取り組みが意味のあるものだったのだと実感できて嬉しいです。
小林:私も石倉さんとほとんど同じです。前職と比較してよりユーザーに近い視点でシステムに関われるところが良いと思っています。実際に使っていただいて、フィードバックをもらって改善していくことができるというのがやりがいです。
どんな方がグループ情報システムセンターに向いていると思いますか?
石倉:堅実さと好奇心を兼ね備えた方でしょうか。情シスは既存のシステムを確実に維持・保守していくという命題があるので、そこは当然堅実さが求められます。
一方で、社員が働きやすくなったり利益につながったりするようなシステムを、情シス起点で企画し実装していくということをわれわれのグループ情報システムセンターでは行っているので、そのための想像力と好奇心も必要だと思っています。
また、情シスにも営業的な要素が求められるというのは、広告事業を展開する博報堂DYグループの特徴だと感じます。社内で起案をするにあたっても、自分たちがやりたいことをキャッチーな言葉で伝え、相手の心に響くようなプレゼンをしなければいけないというフィードバックを合田センター長からはよくいただきます。
小林:たしかに説得する能力、すなわち、人を動かす力というのはより強く求められますね。課題意識を持って働く姿勢も大切だと感じます。社員がより働きやすい環境を整えていくことが情シスのミッションだと考えているので、日々の活動の中で改善できるところを探し、案件化して推進できる方が向いていると思います。
加えて、空気を作っていくスキルも求められます。今回のプロジェクトでも、みんなが意見を言える環境づくりや、全員が同じゴールに向かって進んでいけるような方向づけの大切さを実感しており、そういった全体の雰囲気を作ることができる方にはグループ情報システムセンターにジョインしていただきたいです。
※ 記載内容は2024年10月時点のものです
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